「平和」という木に 「教育」という水を

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東京都武蔵村山市立第八小学校 川上尚司

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通常学級の集団行動に参加できない児童の要因を適切に分析する方法の研究

Assesment of Children with Special Needs and Special Education Resource Rooms

第53回下中科学研究助成金取得者研究発表より

<h1>通常学級の集団行動に参加できない児童の要因を適切に分析する方法の研究</h1>

問題を抱えた子どもたちが、通常のクラスに在籍しながら支援を受けられる「通級指導教室」。どうすればニーズや問題の在処を正確に把握し、適切な支援に結びつけられるのでしょう? 知能検査の種類や特徴を押さえつつ諸ツールを横断的に活用し、数値化しにくい日常生活の細部にまで目を配る「クロスアセスメントアプローチ」は、現場で働く教師ならではの提案です。


──通級入級前から支援開始に至るクロスアセスメントアプローチ

1.はじめに

通級指導教室とは、その必要があると判断された児童・生徒が、通常学級に籍をおきながら、必要に応じて年間35単位時間(週1単位時間)からおおむね年間280単位時間(週8単位時間)以内の特別な支援を受けるために利用する場所である。通級は、全国的には「通級指導教室」と呼ばれるが、東京都では「情緒障害等通級指導学級」と呼んでおり、児童10名に対し教員1名の割合で配置されている他、1名の加配教員がついている。

本論文では、問題のある児童と生徒を見つけ、通級を受けさせるための過程と、どんな課題があるかを提起して論じている(巻末資料「研究概要」参照)。

通級を利用している児童・生徒は、かなり高い割合で通常学級の集団学習・行動上の課題を抱えている。しかし、一見同じように見える問題行動や課題だが、実はその要因は大きく異なる場合がある。例えば、授業を受けられず、教室を飛び出してしまう児童がいたとする。しかし、学習内容が理解できず、つまらないから教室を抜けるのか、感覚過敏があり、近くに人が大勢いることに不快さを感じるためなのか、あるいは多動傾向や衝動性が強く、教室外の音や物の動きに敏感に反応して反射的に飛び出してしまうのか、など、様々な異なる要因を考えることができる。

従って、通級学級担任には、児童・生徒の問題行動や課題だけに注目するのではなく、異なる要因を適切にアセスメントできる力が必要となる。適切なアセスメントを実施するためには多角的な視点から児童・生徒の情報を収集し、取捨選択する必要がある。WISC-Ⅳ、KABC-Ⅱといった知能検査(48~49ページ参照)は、通級支援の適不適を判断したり、問題行動の適切なアセスメントを実施したりするために、いまや必要不可欠と言ってもよい情報である。

ところが残念なことに、これらの検査セットは非常に高価なため、学級で購入し、指導に活用している通級はあまり多くないようである。だが、実際には教員が知能検査を実施できる必要はなく、検査の結果を指導や支援に生かすことができる知識があればよい。そのためか、現在は検査を行うのは各自治体の教育相談や医療に携わる検査者資格を持った臨床心理士で、通級は検査結果を記した所見を元に、児童の特性や課題にあった支援方針を考える、といった分業スタイルが主流となっている。検査実施者と検査結果を基に支援を実践する者とに役割分担が明確になっていることで、それぞれの専門性をより発揮しやすい形になっているといえるだろう。しかし、WISC-Ⅳ、KABC-Ⅱなどの検査結果を通級担任が適切に活用するためには、それらの検査を実施できるだけの知識や経験があるほうが望ましいだろう


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