沖縄県名護市立東江小学校 友利義明
環境の変化する砂浜海岸を理科教材として活用していくための基礎的研究
Learning the Beach Environment through Biological Survey of Atactodea striata, and Donaxfava
第53回下中科学研究助成金取得者研究発表より
一口に砂浜といっても、まったく人の手が入っていない自然海岸から人工海岸まで種類はさまざま。その環境は台風や季節風などの影響もあり、日々変化しているのです。子どもたちに、もっと砂浜に目を向けてもらいたい。そう考えた沖縄の小学校で理科を教える先生が、砂浜の身近な生きものの詳細な生息状況を調査した、ユニークな教材化の試みです。
──イソハマグリとリュウキュウナミノコガイの分布調査を通して
1.はじめに
四方を海に囲まれた沖縄県では、人々の生活は海と深い関わりを持って営まれており、島々を取り囲んでいるサンゴ礁は、先史時代から現在まで人々の生活をさまざまな側面から支える重要な役割を果たしてきた(西原、1986)。
しかしながら、近年になると海岸線の開発が進められるようになり、沖縄島の多くの場所で海岸が埋め立てられ、人工海岸が建設されている。人々がレジャーの場としての活用している砂浜海岸(ビーチ)も、全く人手が入っていない自然海岸、人々が利用しやすいように整備された半自然海岸、砂浜ではない所に人工的に砂を入れ、新たに造りあげた人工海岸など、多様な状態にある。見た目はよく似ているが、成立している基盤が大きく異なるこれらの砂浜海岸では、生息している生物の特徴も異なる可能性があるが、その比較研究はほとんど行われていない。
また、沖縄県は台風の通り道に位置しているため、その規模や風向きによって砂浜海岸も深刻な被害を受けることがある。台風以外にも冬場に強い季節風が発生し、海上が台風並の大時化となることもある。このような強い季節風は、砂浜海岸とそこに生息している生物に大きな影響を与えると思われるが、外部要因による定期的な攪乱によって、どの様な影響を受けるかについての報告はほとんどなされていない。
そのため、砂浜海岸という身近な自然環境が、季節風等による攪乱によって、どの様な影響を受け、どのくらいの期間で元に戻っていくのか。そこに生息する生物は、どの様な影響を受けているのか。などの興味深い疑問が生じる。
本研究では、身近な存在だがその実態について良くわかっていない砂浜海岸とそこに生息する生物を題材とした理科教材開発の基礎研究として、亜熱帯の砂浜海岸に生息する代表的な埋在性二枚貝であるイソハマグリAtactodeastriata,リュウキュウナミノコガイDonaxfavaの調査を行った。今回は、この2種の生息状況と砂浜海岸の環境構造の季節変化の実態について、小学校理科への教材化に向けた視点から報告を行う。