山形県鶴岡市立小堅小学校 小山田正幸
日本海のグリーンフラッシュ現象と気象状況の研究
Observing the Green Flash Phenomenon in Western Coast of Japan
第53回下中科学研究助成金取得者研究発表より
太陽が水平線に隠れようとする最後の瞬間に放つ、美しい緑色の閃光。太平洋の島々などで目撃されることの多いという現象を、日本海側の海岸でも見ることはできるのでしょうか? そして、どんな気象条件がそれを可能にするのでしょうか? 山形県の小学校教師が、子どもたちと観測に適した夕日を待ちながら撮影のチャンスを掴んだ貴重な記録です。
1.はじめに
太陽が輝いて晴れ渡った一日が過ぎ、夕日が遠い山並みに隠れようとする時、または遙かな水平線上に沈む時、空の様子は刻々と変わっていきます。そして、日没の瞬間、普段は丸い太陽像はさまざまな形を見せてくれます(写真1)。上下につぶれて扁平形に見えたり、像の途中がくびれてワイングラスのように見えたりすることもあります。これらは地球を取り巻く大気の影響であり、空気の密度差により光が屈折するからです。
大気による光の屈折はその波長(色)によっても異なり、気候条件がそろえばグリーンフラッシュもその大気差によって表れます。
2.グリーンフラッシュ現象とは
グリーンフラッシュは、太陽が地平線や水平線等に没しようとする時、太陽が最後に放つ緑色の閃光(フラッシュ)です。この現象の原因は地球の大気中の光線の屈折によるもので、プリズム効果によって起こることが知られています(図1)。
夕焼けの彼方に沈む夕日が、その光を没する瞬間に放つ緑色の閃光は、非常に美しく印象に残る興味ある現象です。南太平洋に位置するグアム島やハワイ諸島等では、「この光を見ると幸せになれる」とか「夢がかなう」等の逸話が語られています。赤道に近い低緯度の海洋を航行する船舶から見られた、という船員さんの話も聞いたことがあります。
それでは、周りを海に囲まれている島国の日本からは、このグリーンフラッシュ現象は見られないのでしょうか。通説では、日本国内でこの現象が見られることは非常に珍しく、小笠原諸島等の離島や高山からの観測報告はあるようです。しかし、その時の気象データ等が不明であることが多く、観測調査記録の集積が求められています。本研究は、国内(日本海沿岸部)において、グリーンフラッシュ現象は見られるのかを確認します。そして、もし見られるとしたら、どの時期にどのような気象状況の下に起こるのかを観測し、その状況や気象条件などを明らかにすることを目的とします。