宮城県古川黎明中学校 遠藤拓海
大崎市内における絶滅危惧淡水魚の分布調査と環境教育教材の開発
The Survey and Report of Endangered Neighborhood Species as Enviromental Education
第53回下中科学研究助成金取得者研究発表より
絶滅危惧種のメダカをはじめ、ギンブナやモツゴ、ドジョウなど……。ラムサール条約登録湿地である化女沼(けじょぬま)周辺でも貴重な在来種の数は減り続けています。中学校の自然科学部の子どもたちが、身近な小川や用水路に住む魚たちを調査し、「在来種マップ」や「ミニ水族館」を作成。人と自然が共生する地域の環境意識を高める大きな効果がありました。
1.はじめに
中学校学習指導要領では、「自然と人間」の学習内容として、自然環境の調査と環境保全について記してある。自ら地域の自然環境について調査することで、自分が住む地域の環境に意識を向けさせ、環境保全について考えさせることができる。平成20年の学習指導要領改訂により、中学校で外来種について学習することとなった。外来種の中でも、代表的なものはオオクチバス(Micropterussalmoides)で、現在日本全国に広まっていることが分かっている(淀、井口、2004)。本校のある大崎1)市には、ラムサール条約登録湿地である化女沼(けじょぬま)をはじめ、多くの小川やため池が存在している。化女沼は、宮城県大崎市にある自然湖であり、2008年にラムサール条約登録湿地に指定され、豊かな自然環境を有しており、動植物の生息地としての役割も果たしている。近年、オオクチバスやブルーギルといった外来種が持ちこまれ、徐々に増えてきた。現在では、在来種であるギンブナやモツゴ、ドジョウなどの数が激減し、湖の98.5%を外来種が占めていることが分かっている(NPO法人エコパル化女沼、2011)。
本校自然科学部は、平成26年度4月~11月にかけて化女沼を水源とする田尻川の魚類分布調査を行ったところ、化女沼にはほとんど生息していない絶滅危惧Ⅱ類であるメダカ(Oryziaslatipes)やスナヤツメ(Lethenteronreissneri)、ギバチ(Pseudobagrustokiensis)が生息していることが分かった。
本校の近くには多くの水田があり、その中には小さな用水路も存在する。そこには、メダカやキンブナ(Carassiusauratusssp.2)等が地域住民や自然科学部の予備調査で確認されている。これらの魚類はいずれも宮城県や環境省指定の絶滅危惧種であり、それが生息する用水路や小川は生物学上、貴重な場所である。
今までの調査を通じて、この用水路や小川において絶滅危惧種が存在することは分かってきたが、詳しい生息場所や個体数、繁殖状況についてはまだ十分に調べられていない。市街地の中心でありながら貴重な魚類が存在するこの地域は環境保全の学習に適していて、さらに本校の近くであることから、この用水路や小川は地域教材としても有効だと考えられる。そこで、今後さらに詳しく調査し、絶滅危惧種の正確な分布について調べたり、その他近隣の用水路についても調査したりして、貴重な魚類の新たな生息地を探していきたいと考える。
調査・報告は本校の生徒と行い、自ら調べ、発表する環境学習プログラムとしても活用していく。本研究の成果を積極的に公開し、貴重な自然環境が存在すること、危険にさらされていることを伝えることで、一人一人の環境保全への意識を高めることもできると考える。よって本研究の目的を以下の3つとする。