
茨城県小美玉市立玉里東小学校 宮内主斗
ユニバーサルデザインを意識した理科の授業
Universal Design for Learning Science in the Classroom
第53回下中科学研究助成金取得者研究発表より

インクルーシブ教育の大切さが説かれるなか、通常学級においても、さまざまな発達障害により授業で「特別な配慮」を必要とする子どもたちが少なくありません。現役の小学校教師が、かつて「理科授業づくりの名人」として知られた玉田泰太郎氏の手法を分析。そのエッセンスを取り入れた授業を実践しながら、教育におけるユニバーサルデザインを考えます。
1.ユニバーサルデザインを意識した理科とは
(1)インクルーシブ教育は根付くのか
いろいろな子を合理的な配慮をしながら受け入れ、教育していくインクルシーブ教育が実施されようとしている。平成25年6月に障害者差別解消法も制定され、例えば、「知的障害のある人に、分かりやすく説明しない。」というのは、差別にあたり、訴えられることになった。通常学級の普通の授業においても、いろいろ配慮の必要な子がいる。文部科学省は6.5%の子が、「特別な配慮を必要とする子である」という調査結果をまとめている。
この6.5%という数値は、特別支援学級に在籍する子を含んでいない。1割に近い児童であるから、特別支援学級に在籍する児童を含むと思っている人も多いかもしれない。しかし、通常学級に在籍する児童の6.5%なのである。
40人×6.5/100=2.6
つまり、40人学級だと、2~3人もいる計算になる。20人学級でも1~2人ということだから、無視できない数値なのである。
ならば、「特別な配慮を要する児童がいる」ことと、「特別な配慮がされている」ということは、同じになっているだろうか。「特別な配慮を要する児童がいる」のだが、「特別な配慮をしていない」という事態になっていないだろうか。
話が聞けない子がいる。いろいろな原因が考えられるが、「視覚優位で、見れば分かるが聞いても言葉が理解できない」という場合がある。その子に「話を聞きなさい」と指導するのは、それほど効果がない。見て分かるような資料を示した方が良い。この程度のことなら、誰もが理解し、実行できるはずである。
インクルーシブ教育が根付くことを本気で考えているなら、すべての教員が「特別な配慮」が何なのか、どうやって指導するのかを理解し、実行することができるようにする必要がある。
それに対する研修が、行われているかと言えば、十分ではあるまい。現場は多忙であり、よほど時間と手間をかける覚悟がなければ、研修に取れる時間は作れない。
結局、個人の努力に任せられているのが、現状ではなかろうか。そうなると、インクルーシブ教育もかけ声だけに終わりかねない。