「平和」という木に 「教育」という水を

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秋田県立平成高等学校 菅原優子

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高校の保健室で用いられるオノマトペの特徴と教育的意味の検討

Characteristics of Onomatopoeia in High School Health Room

第54回下中科学研究助成金取得者研究発表より

<h1>高校の保健室で用いられるオノマトペの特徴と教育的意味の検討</h1>

モヤモヤ、ズキズキ、ムカムカ、ピリピリ、バーン……。学校の保健室を訪れた高校生との会話には、おなじみの擬態語や擬音語がたくさん。でも、それって正確にはどういう意味? 生徒たちは、どんな悩みや痛みや不安をその表現に託しているのか。市内に勤務する複数の養護教諭たちが協力し、この世代特有のコミュニケーションの在り方を研究しました。


1.はじめに

高校の保健室には、様々な理由で生徒が来室するが、単語を発しただけで、その後の言葉が続かなかったり、自分の心身の状態をうまく表現できず、曖昧な訴えをする高校生は少なくない。たとえば、「気持ち悪い」と訴えて保健室に来室した場合、その訴えが、“心身の不調を表現しているのか”、“何らかのサインなのか”、“身体感覚が適切なのか”、それとも“病気対処行動の問題なのか”などについて、生徒との対応過程において判断し、見立て、対応することになる。そこで、養護教諭は、身振りを交えたり、たとえを示したりしながら様々な発話を通し、生徒が“具体的な表現で、より的確に”養護教諭に伝えることができるよう、言語表現を促している。そのような対応過程における発話の中に、オノマトペが含まれていることを日常的に経験している。

オノマトペは、古代ギリシャ語に由来するフランス語(onomatopée)で、「音による命名、音自身が名になる」という意味があり、擬音語・擬態語の総称として用いられている。乳幼児との会話で、車を見2)て「ブーブー」、犬を見て「ワンワン」と言うように、実際の音を“聞こえるように”表現する言葉である擬音語や、頭が「ズキンズキン」痛い、緊張して「ドキドキ」するなどと、音を発しない物の動きや変化の状態・様子などを言語描写した擬態語は、成熟した“正規”の言葉ではなく、言語系の周辺なものとして扱われ、オノマトペ語彙の少ない英語などにおいては特に、言語学研究上の位置づけが低いという歴史的経緯があった。すなわち、子どもとの対話を円滑にするための方便として活用される、言語獲得過渡期の言葉という位置づけが一般的であったわけである。また、このような学問上の取り扱いが遠因となり、日常の言葉の発達を促す教育現場においても、オノマトペの位置づけが低くなり、最終的には使わないで済むようになるのが到達目標と言っても過言ではないという状況が続いてきた。オノマトペを使うこと自体、相手を子ども扱いすることにつながるという認識が一般的であったと言える。

一方で、近年、対話におけるオノマトペ表現の力を直感的に理解し、実践的に活用する中で、対話が活性化するなど、相互作用がもたらされたとする報告が、特別支援学校や小学校などで見られるようになってきた。中学校では、説明を書く能力育成のため、オノマトペを題材にした指導方法の報告がある他、幼児の保育や看護の分野では、オノマトペの臨場感あふれる描写力が幼児にわかりやすく伝えるための重要な要素であるという報告もある。さらに、東日本大震災における医療支援において、被災者の患者と全国各地から派遣された支援チームとの対話には、身体感覚や症状、気持ちを表す表現がたくさんある方言オノマトペが、なくてはならない存在であったと報告されている。その報告によると、日本語には、他の言語に比べて特に擬態語が多く、副詞や動詞のように使われる点に特徴があると言われている。擬態語は、動きや存在の様子をいわば感覚的に表現するもので、身体感覚の表現にもよく使われる。身体感覚を他の人と共有することは難しいが、言葉による表現を通して、他の人の身体感覚を理解したり、想像したりすることができる、とある。高校の保健室においても、身体感覚の共有化は、生徒のニーズを把握するための重要な要素であり、養護教諭の対話行動にはオノマトペが多用されているのではないかと考えた。

そこで、高校の保健室において、生徒と養護教諭との具体的な対話の場面を記録することにより、特に養護教諭のオノマトペの使用状況に注目して、実際に用いられているオノマトペの傾向と特徴を明らかにし、どのようなあり方で対話行動に貢献しているのか、その教育的意味を検討した。


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