法政大学第二中・高等学校 五十嵐聡
魚沼丘陵〜志賀高原地域,後期中新世〜前期鮮新世THマグマとCAマグマの成因関係
Early Pleistocene Volcanic Rocks in Northern Fossa Magna Region
第54回下中科学研究助成金取得者研究発表より
ソレアイト(TH)系列とカルクアルカリ(CA)系列。2種の火山岩はいつ、どのように形成され、分化したのか? 東北日本と西南日本の境目となる「大きな溝」であるフォッサマグナ。その北側部分に着目した現役教師による論文は、カリウム-アルゴン法と呼ばれる放射年代測定による詳細なデータなどを駆使したレベルの高い地質学の研究報告です。
──北部フォッサマグナ,中央隆起帯北東部の前期更新世火山岩類の研究を基に
1.はじめに
日本列島の中央部,本州弧(東北日本弧と西南日本弧)と伊豆・小笠原弧が交差する位置に存在する溝状の地質構造としてのフォッサマグナ(第1図a以下、図の説明は巻末参照)の成因については,日本海の拡大や伊豆・小笠原弧の衝突と関連づけられ議論される事が多い。このフォッサマグナ地域は,諏訪湖付近において北部と南部に区分され,北部は日本海の拡大(2000万年前〜1500万年前)とその後の伊豆・小笠原弧の衝突の影響,南部は伊豆・小笠原弧の付加・衝突(丹沢地塊がおよそ600万年前,伊豆地塊がおよそ100万年前に衝突)(松田,1961,1976;藤岡・平田,2014など)によって形成されたとの議論がある。
北部フォッサマグナ地域の火成活動は,漸新世から中新世(2700万年前〜1300万年前)(周藤ほか(1997)により3ステージに細分されている),中期中新世(1200万年前〜900万年前),後期中新世〜鮮新世(700万年前〜300万年前),更新世・完新世(300万年前以降)に区分される(竹之内,2015)。
筆者は,長年,北部フォッサマグナ地域(第1図b)の,とりわけ関田山脈・魚沼丘陵〜志賀高原地域前期更新世火山岩類を研究対象にし,さらに後期中新世から前期鮮新世の火山岩類および深成岩類について,それらを形成したマグマの性質,分化作用等について検討してきた。今回は,「魚沼丘陵〜志賀高原地域,後期中新世〜前期鮮新世THマグマとCAマグマの成因関係」をテーマとして下中科学研究助成金に採択されたが,現段階でK−Ar放射年代など測定中であり報告する事ができないので,現在もより広域を対象として検討している北部フォッサマグナの前期更新世火山岩類の研究を基に,テーマについて検討していく。