鹿児島市立甲東中学校 原口栄一
災害資料を教材とした道徳授業の開発
Moral Education to Learn from History of Natural Disaster
第54回下中科学研究助成金取得者研究発表より
地震や噴火、台風などの自然災害で人は何を考え、どう行動してきたのだろうか。さまざまな災害資料から歴史を知り、自分ならどうする? を考えます。防災の知識だけでなく、災害のメカニズム、デマや二次被害、災害後を生きる人びとの心の問題まで。桜島にほど近い中学校に勤める理科教師が、災害を多面的に捉えた深みのある道徳の授業を生み出しました。
1.はじめに
私たちは忘れてはいないだろうか。日本列島は,太平洋プレート,北米プレートなど4枚のプレートで構成されており,そのため有史以来でも火山や地震が大変多い国に住んでいることを。また,有史以前には,とてつもなく大きな火山噴火も起きているということを知っている人はどれくらいいるだろうか。
工学博士である畑村洋太郎氏が書かれた「未曾有と想定外」(講談社現代新書)に「『人は忘れる』という大原則がある」とある。その項では「ある記憶について個人では3日で飽き,3月で冷め,3年で忘れる。組織は30年で途絶える。地域は60年で忘れる。社会では300年でなかったことに,文化としては1200年で起こったことなど知らないということになるのである。」と要約できる。
例を挙げると,次のようなことである。
・組織が途絶える
1959年伊勢湾台風襲来
・地域が忘れる
1923年関東大震災
1888年会津磐梯山噴火
・社会から消える
1783年浅間山噴火
1707年富士山噴火
・起こったことを知らない
887年仁和地震
869年貞観地震
734年天平地震
・一部の研究者しか知らない有史前
7300年前鬼海カルデラ噴火
26000年前姶良カルデラ噴火
85000年前阿蘇カルデラ噴火
112000年前洞爺カルデラ噴火