異なる光波長のLEDを照射した場合の緑藻海ぶどうの生長 | 下中記念財団

「平和」という木に 「教育」という水を

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静岡県立駿河総合高等学校 金子誠

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異なる光波長のLEDを照射した場合の緑藻海ぶどうの生長

CAULERPA LENTILLIFERA

第56回下中科学研究助成金取得者研究発表より

<h1>異なる光波長のLEDを照射した場合の緑藻海ぶどうの生長</h1>

食卓に上ることも珍しくなくなってきた海ぶどう。健康食品としても大きな需要拡大が見込まれる中、通年商品とするための新たな養殖方法の開発が期待されています。静岡県立駿河総合高等学校の金子先生は、LEDを使った新しいアイディアで、生徒たちと一緒にこの課題に取り組みました。


1.はじめに

クビレズタCaulerpa lentillifera は暖かい海に生育する海藻(緑藻)で、その姿から海ぶどうとも呼ばれている。暖かい海に生息する緑藻類の仲間で、グリーンキャビアなどとも呼ばれている。以下、本報告では親しみやすい海ぶどうと表記する。

沖縄では、古くから食用とされてきたが、保存性が低く、低温に弱いため、これまで都市部では扱われてこなかった。しかし、数年前から宮古島で養殖が始まり、流通技術も向上したため、最近では、静岡市内のスーパーマーケットなどでも見かける機会が増えてきた。海ぶどうは、蒲萄枝(ほふくし)と呼ばれる茎を伸ばし、海底に固着するための仮根を持つ(写真1)。匍匐枝から水面に向かって、直立した葉状部を生やし、このぶどうのような房の部分が食用となる。低カロリーで食物繊維やビタミンが豊富に含まれていることから、健康志向にある高齢の方やダイエット効果を期待する若い女性などに、これから需要が見込まれている。

藻類を養殖するためには、対象種の生長や光合成に最適な水温や栄養塩濃度、光量、光波長について調べる必要がある。海ぶどうについては、最適水温や栄養塩が生長に与える影響について調べられているものの、光環境条件に関する知見はあまりない。宮古島では、温暖な気候を利用し、太陽光により海ぶどうを養殖している。しかしながら、海ぶどうの生長が最も良くなるのは、水温が24℃〜27℃となる夏場のみであり、今後の需要拡大に対応するためには、温暖な地域以外でも周年を通じて養殖する必要がある。この場合には、屋内の温調設備の整った施設で養殖することになるため、太陽光を用いることは難しい。したがって、室内光を使用する必要があり、有力なものとしてLEDが挙げられる。LEDは白熱電球と比べて、電力消費量が約1/5で、寿命も長い。そしてなにより特定の波長の光を放出することができるため、海ぶどうの生長に最も適した光で養殖することが可能になると考えられる。さらに、異なる光波長条件下で育てた海ぶどうでは、その特定の波長で生長が異なった(申請者実験:未発表)ことから、生体内部の光合成色素の組成にも違いあると考えられる。具体的には、吸収波長がそれぞれ異なるクロロフイルaとb、カロテンやキサントフィルといったものである。これらの色素はヒトに対して、さまざまな機能性があることが報告されており、カロテノイド系のものには抗肥満作用などがあるとされている。中でも、緑色光(540nm)を吸収するシフォナキサンチンやシフォネインは緑藻類の一部にみられる光合成色素で、海ぶどうにもその存在が確認されている。シフォナキナサンチンについては脂肪細胞への分化を抑制するような作用や血管新生を阻害することも報告されている。仮に異なる光波長を照射することによって、これらの機能性をもつ光合成色素が増加すれば、肥満を予防する機能性食品や化粧品の開発につながることも考えられる。

本研究は、高校生の理科学的好奇心を引き出すことを大前提に、異なる光波長を照射したときの海ぶどうの生長を調べることとした。


※全文はこちらからPDFにて閲覧いただけます。

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