女子聖学院中学高等学校 藤原 博伸
発雷と雨水に着目した都市型局地的豪雨をもたらす積乱雲の探求
Cumulonimbus
第59回下中科学研究助成金取得者研究発表より
気象場の研究は生徒たちの身近にあるSDGsの目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を考える」に関連した課題研究の一つとしても最適なテーマである。
1.はじめに
本研究の目的は、理科の物理・化学・地学の3分野の基礎的な知識を組み合わせることで、極端気象による都市型局地的豪雨(以下:局地的豪雨)の原因を探求することである。局地的豪雨を研究課題とした理由は、直近10年間の気象庁の観測結果によるとその発生数が全国平均で約3割程度増加しており、一度発生すると都市に甚大な被害をもたらしているためである。しかも局地的豪雨に関してはその原因も明らかになっていない。気象場の研究は生徒たちの身近にあるSDGsの目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を考える」に関連した課題研究の一つとしても最適なテーマである。また、本テーマは課題研究を通じて複合的観点からの思考力を養う上でも有意義なものであり、2022年度から開始される高等学校学習指導要領に基づく「総合的な探求時間」に於いても、教科や科目等の枠を超えて学習できる課題にもなり得る。
また、本テーマでは課題研究を通じて、マイコンを利用した自動分割型雨水採水装置の開発を行うことでプログラミングの方法やモータ、LEDライト、RTCなど各種デバイスの利用の仕方を学習する。また、簡易分析器(HORIBA_LAQUAtwinシリーズ)を用いて、分割して採取された雨水の水素イオン濃度、電気伝導度、ナトリウムイオン濃度や硝酸イオン濃度などの化学的分析を行い、雨水が海洋由来のものか人為由来のものかについて判断する。また、大学や専門機関の協力によりX-band multi-parameter radarのecho data(以下:レーダーデータ)を利用し、局所的豪雨地域における積乱雲(以下:雷雲セル)の移動や発達の状況を俯瞰しつつ、学習した知識を基に雷雲セル内部の凝結核(CCN)の生成や、氷晶粒子の衝突による大気電気的な現象を考察する。特にレーダーデータ解析では、公開されているDIAS(データ統合・解析システム)から得られるデータと雷データとを本研究で提示する条件で統計処理することで、雷雲セルの移動や発達の状況を可視化し、雷雲セル内部の電荷の偏りについて考察する。ただし、生徒が自動観測した雷データでは、発雷時刻と位置の十分な精度を得ることができないため、フランクリン・ジャパン(株)が運用するJLDN(Japanese Lightning Detection Network)のデータを利用した。