
沖縄県立総合教育センター 主任研究主事 林 尚美
絶滅の危機にあるミナミメダカの教材化と教員研修などを通した普及・啓発
Japanese Medaka
第59回下中科学研究助成金取得者研究発表より

日本産メダカは、遺伝学的鑑定の手法であるアロザイム分析、ミトコンドリアDNA分析の結果及び形態の違いに基づき、キタノメダカとミナミメダカの2つの種に大別されている。
1.はじめに
メダカは小学校理科の教科書に掲載されている教材生物であり、日本人の誰もが知っている身近な生物の1つである。ダツ目メダカ科に属しており、日本では以前には青森以南のどこでも確認され、流れの緩やかな小川や田んぼに接続する水路などに生息する身近で親しみやすい淡水魚であった。日本産メダカは、遺伝学的鑑定の手法であるアロザイム分析、ミトコンドリアDNA分析の結果及び形態の違いに基づき、キタノメダカとミナミメダカの2つの種に大別されている。キタノメダカとミナミメダカの形態的特徴の差異は、キタノメダカは黒い染みや網目ができ、背びれの切れ込みが浅いのに対して、ミナミメダカは黒い染みや網目ができず、背びれの切れ込みが深いとされている。さらに、遺伝的多様性が高いミナミメダカは「東日本型」、「東瀬戸内型」、「西瀬戸内型」、「山陰型」、「北部九州型」、「大隅型」、「有明型」、「薩摩型」と「琉球型」の9つの地域型に区分されている。中でも、種子島以南のメダカは、ミナミメダカ「琉球型」とされている。さらに、沖縄産のミナミメダカ「琉球型」については、近年のDNA解析により、沖縄固有のミトコンドリアDNA型をもつ在来の個体群であることが確認されている。一方で、在来の個体群ではない場所も確認されている。