「平和」という木に 「教育」という水を

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板橋区立高島第三小学校 鈴木 健一

板橋区立高島第三小学校 鈴木 健一

知識の活用による言語活動と運動技能の関係についての実証的研究

Language activities and athletic skill

第61回下中科学研究助成金取得者研究発表より

<h1>知識の活用による言語活動と運動技能の関係についての実証的研究</h1>

運動学習においては、「知る(=分かる)」ことがそのまま「できる」ことにはならないという問題が潜んでいる。


1.緒言

1.1.問題の所在

文部科学省は、2017年告示小学校学習指導要領において、すべての教科の目標・内容として「知識及び技能」・「思考力、判断力、表現力等」・「学びに向かう力、人間性等」の観点を示した。体育科においては、保健領域において「知識・理解」にはなじみがあるものの、運動領域においては目標・内容ともに「知識」にかかわる事項が示されたことはなく、指導現場における様々な課題が垣間見られる。小学校学習指導要領解説 体育編によると、知識における目標は「特性に応じた各種の運動の行い方(中略)について理解する」とあり、それは「各種の運動で得られる楽しさや喜び、そこで解決すべき課題、それらの解決方法に応じた行い方を理解すること」を意図していると解説されている。

すなわち、学習課題となる運動や技の試行によって得られる楽しさとともに、その運動や技の試行において生じるであろう動きの課題やその課題の解決方法を児童が理解することをねらっている。また、「それらの理解は、各種の運動の基本的な動きや技能を身に付けることに効果的であることを意図している」との解説から、運動や技の試行において課題を見出したりその課題を解決したりする際に発揮される知識として理解された内容は、動きの修正や習得に有効であることがうかがえる。

しかしながら、速く走る・高く跳ぶ・自在に体を操作して技を完了するための体の動かし方を知ったとしても、トップアスリートのように速く走ることや高く跳ぶこと、アクロバティックな体操を実現することはできない。つまり運動学習においては、「知る(=分かる)」ことがそのまま「できる」ことにはならないという問題が潜んでいる。

それでは、先の「それらの理解は、各種の運動の基本的な動きや技能を身に付けることに効果的であることを意図している」とは何を示しているのだろうか。例えば跳び箱運動の開脚跳びの達成に必要な体の動かし方である、「ふみ切って遠く(運動方向に対して跳び箱の奥側)に手を着く」という手順を知っていても、その手順を的確に実行できるわけではない。それは、学習者が試行を重ねる中で、目標となる手順の準備段階で必要な体の動かし方を察知し、その実現を後押しする内面の状態が、ここでいう“理解”の意味であると考えられる。

M.ポラニーはゲシュタルトの形成過程について、「『ゲシュタルト』は、認識を求める過程で、能動的に経験を形成しようとする結果として、生起するものである」と述べ、そこから形成あるいは統合された言葉では表すことのできない知を「暗黙知」とし、ゲシュタルトの構造を暗黙的思考の論理として理解している。そして、科学や芸術、運動などの分野における「知る」の実例として「知っている」ことと「できる」ことを取り上げ、「対象を知っている」ことと「方法を知っている」ことが相互依存の関係にあることを示している。加えて、技能を遂行する際の注意を払う過程について、「小さな個々の運動からそれらの共同目的の達成に向かって注意が払われ」るとしている。

ポラニーの論から非日常的な運動である器械運動領域における技や動きについてはどのような理解がなされるであろうか。K.マイネルは、新しい動きの獲得について意識的な運動反復の必要性を述べている。よって、体育科における運動の習得・技能の向上には、その運動や技の動きの形式的理解を前提に、意識化を伴いながら試行を継続して自己の動きを統合し、評価して、次の試行につなげる学習プロセスが欠かせないと推察される。

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