特別支援学校における生成AI対話システムの導入 ―授業準備と振り返り支援の効果検証― | 下中記念財団

「平和」という木に 「教育」という水を

「平和」という木に 「教育」という水を

兵庫県立氷上特別支援学校 教諭 兵庫教育大学大学院 障害科学コース 黒田 一之

兵庫県立氷上特別支援学校 教諭 兵庫教育大学大学院 障害科学コース 黒田 一之

特別支援学校における生成AI対話システムの導入 ―授業準備と振り返り支援の効果検証―

Introduction of AI systems in special needs schools

第62回下中科学研究助成金取得者研究発表より

<h1>特別支援学校における生成AI対話システムの導入 ―授業準備と振り返り支援の効果検証―</h1>

本研究は、生成AIとの対話を活用して特別支援学校における生徒の実態に合わせた指導案作成、振り返り支援の効果を検証することを目的とする。

Ⅰ.問題と目的

特別支援教育においては、障害のある子供一人一人の能力や可能性を最大限に引き出し、自立と社会参加に必要な力を育成するために、個々の障害の状態に応じたきめ細かな指導と評価の充実が不可欠である(文部科学省, 2021)。しかしながら、教育現場では、この指導及び評価の充実が十分に実現されていない現状がある(和田ら, 2015)。

特別支援学校における個々の障害の実態に合わせた指導につなげる取り組みとして、いくつかの先行研究が存在する。内海・安藤(2021)は、肢体不自由特別支援学校での教師協働による校内研修プログラムが、児童生徒の理解や授業改善に有効であることを示した。この研究では、複数の教師による多角的な視点が重要であることが明らかになったが、同時に時間的負担や協働する相手が必要であるという課題も浮き彫りになった。

また、佐々木ら(2017)は「後方視的対話」を用いた研究において、この対話手法が教師間の協働と指導内容の改善に効果的であることを実証した。この手法により、教師が同僚等と教育実践を振り返りながら授業改善のPDCAサイクル1を促進することが可能となった。

さらに、関原・岡﨑(2021)の研究では、コルトハーヘン(1985)のALACTモデル2 を基にした「8つの問い」を活用した省察が、子どもの見取り方に変容をもたらし、指導の充実に関する理解を深めることができたことが示されている。

これらの先行研究から、個に合わせた授業準備と振り返りには同僚との協働や対話が重要であることが明らかになっている。しかし、内海・安藤(2021)が指摘するように、その実現には協働する相手が必要であり、時間的な負担も大きいという課題が存在する。

これらの課題に対する新たなアプローチとして、黒田(2024)による特別支援学校教員アシストAIの予備調査がある。この予備調査では、生成AIが若手教員に新たなアイデアの獲得を促し、児童生徒の実態に合わせた授業や指導に有効であることが示されている。

本研究は、これらの先行研究を踏まえ、生成AIとの対話を活用して特別支援学校における生徒の実態に合わせた指導案作成、振り返り支援の効果を検証することを目的とする。

生成AIの教育現場での活用については、文部科学省(2023)の生成AIガイドラインにおいて、教員の相談役としての活用事例が示されている。生成AIは時間的・人的制約がなく、教師がいつでも振り返りを行い、即時に応答できるという特性を持つ。これにより、内海・安藤(2021)が指摘した時間的負担や協働の必要性といった課題を軽減できる可能性がある。

※全文はこちらからPDFにて閲覧いただけます。

2024年(令和6年度)「下中科学研究助成金」募集開始
パール下中記念館
ECアーカイブズ
百科事典情報基盤助成金
雅楽

下中科学研究助成金について

小学校・中学校・高等学校や教育センターなどの機関に属する教員や研究員が行っている「科学研究」を対象とした助成です。1963年の開始以来、すでに50年以上の実績があります。

最初に戻る
地球は万人の有である。太陽は万人の上にまんべんなく照る

下中弥三郎のことば