地層の学習における新たなアプローチ:地質構造の3Dモデリング教材の開発・実践・普及 | 下中記念財団

「平和」という木に 「教育」という水を

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市川市立大洲中学校 教諭 西澤 輝

市川市立大洲中学校 教諭 西澤 輝

地層の学習における新たなアプローチ:地質構造の3Dモデリング教材の開発・実践・普及

New approaches in learning geologic strata

第62回下中科学研究助成金取得者研究発表より

<h1>地層の学習における新たなアプローチ:地質構造の3Dモデリング教材の開発・実践・普及</h1>

本研究では、地層の三次元構造を視覚化し、地層の重なり方や広がり方の理解を促進する教材を開発した。

1.はじめに

小・中学校理科の地球領域では、小学校理科第6学年の「土地のつくりと変化」や中学校理科第1学年「大地の成り立ちと変化」の学習単元で、地層を含む土地のつくりについて学習する。特に、中学校における地層に関する学習内容について中学校学習指導要領 平成29年告示では、理科第1学年における「大地の成り立ちと変化」の「(イ)身近な地形や地層、岩石の観察」において、「地層の様子やその構成物などから地層のでき方を考察し、重なり方や広がり方についての規則性を見いだして理解するとともに、地層とその中の化石を手掛かりとして過去の環境と地質年代を推定できることを理解すること。」と記載されている。つまり、中学校における地層に関する学習では、地層から得られる情報を手掛かりとして、三次元的な地層の構造を理解することが柱の一つとされている。

中学校理科第1学年「大地の成り立ちと変化」における学習では、現行中学校学習指導要領に記載されている通り地層の三次元構造の理解が第一義的に重要であるが、教科書やプリント等の紙面を用いた伝統的な指導方法では地層の情報を二次元的にしか提示することができない。実際に、寺島(2016)は、教育学部理科専修の大学生を対象として2012年度全国学力・学習状況調査の中学校理科の問題を回答させた結果、中学生と同様の誤答傾向があり、紙面上で地層の状態を平面的にイメージできても、奥行きを含めて立体的に地層の傾きをイメージすることに課題があると指摘している。つまり、紙面の二次元的な情報を基にした学習では、「重なり方」と「広がり方」といった地層の三次元構造を理解することに課題があると考えられる。

また、公立小・中学校における地学分野の野外実習の実施率の低迷が複数の先行研究によって明らかになっている。特に、中学校における地層の観察を目的とした野外実習については、実施のための時間の確保が困難であることや適当な露頭がないことなどから現実的には実施が難しいと指摘されている。すなわち中学校における地層に関する学習では、実際に地質試料に触れることなく指導する場合が多いと考えられる。

当該単元の学習に関しては、地層の三次元的な構造を理解させるために、寒天を使った模型教材が開発されているが、地層の「広がり方」を面的に表示してその理解を促進する教材や、実際の地質データに基づいて三次元的に可視化する教材は、現時点では報告されていない。そこで本研究では、地層の三次元構造を視覚化し、地層の重なり方や広がり方の理解を促進する教材(以下、3Dモデリング教材)を開発した。

さらに、この教材の開発にあたっては、学校が保持している地盤のボーリング試料や自治体で公表されている地質データなどの活用を念頭に置いて、全国の小・中学校で活用可能なものとなるようデザインした。これにより、地学教育の問題点として従来から指摘されてきた、地域格差や地域ごとの事情に起因する地層に関する学習の不平等性の解消に寄与するものと考えられる。

※全文はこちらからPDFにて閲覧いただけます。

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