国立高知工業高等専門学校 大沼 敦子
「ガ行」「カ行」聞き分けに特化し、化学の理解を深めるリスニング補助教材の開発
Listening aids for better understanding of chemistry
第62回下中科学研究助成金取得者研究発表より
化学用語にはカ行【k】とガ行【ɡ】の出現率が有意に多い。ガ行とカ行の弁別は、有声音と無声音を区別しない母語(中国語、タイ語、ベトナム語)の留学生の多くにとっては非常に困難である。
本研究の概略・背景
本研究は、日本語を母語としない生徒・学生が化学科目の理解を深めるための新しいリスニング副教材の開発を目指すものである。読む力(語彙)と聞く力(発音)を結び付け、効率よく知識を積み上げられる環境を提供することを目的とする。現状は国立高専で学ぶ留学生の利便性を考慮して研究を進めているが、汎用性があり、高知県内さらには日本国内で増え続けている外国にルーツを持つ児童・生徒・学生のすべての科目教育に応用できる可能性がある。
【なぜ化学か】
ほかの理系科目(35%)に比べて、化学用語にはカ行【k】とガ行【ɡ】の出現率が有意に多い(65%)。また、カ行ガ行を含んだ長い複合語も多い。これらの音の弁別は、化学の基礎概念を理解し、授業内容を正確に把握するために不可欠である。
【なぜガ行カ行か】
ガ行とカ行の弁別は、有声音と無声音を区別しない母語(中国語、タイ語、ベトナム語)の留学生の多くにとっては非常に困難である。例えばタイ語においては「無声音と対立している有声音がないために、有声音をうまく発音できない」(2004 アサダーユット)、「語頭の/ガ/行が困難である」(2004平岩)など、日本語の濁音と清音の聞き分けが極めて難しいことに起因する発音の難しさが指摘され、「日本語の【ɡ】はタイ語にないため、英語の【ɡ】と説明する」(2004 アサダーユット)など、解決のためのさまざまな提案がなされてきた。