広島大学附属東雲中学校 天野 秀樹
中学校数学科授業における曲の創作研究~図形を移動させる見方を活用して~
Music Creation Lessons Using Transformations of Mathematical Figures
第63回下中科学研究助成金取得者研究発表より
本研究では、音源の一部の音程と音価を図形として捉えて、それを(反復)移動させて曲を創作させる。例えば、「幸せなら手をたたこう」を音源として、この音源を1つの図形として捉える。
1.研究の方向性
生成AIをはじめとしてデジタル技術が飛躍的に発展する世の中において、文部科学省(2025)では「教科横断」、「実社会とのつながり」、「自身の学びに対するオーナーシップ」を視点とした学びの実現の必要性を謳っている。そして、具体的活動として「作画」、「作詞・作曲」、「小説の執筆」が、人間が得意なことと生成AIが得意なことの中間にあると位置づけている。
文部科学省(2025)が提示した3つの活動のうちの1つに該当する「作曲」に注目した学びが、本研究『中学校数学科授業における曲の創作研究』のテーマである。
「作曲」を教科横断で志向する実践研究は、音楽科が主流である。甫出・天野(2025)をはじめ、曲を図形として捉えることをもとにした音楽科の実践がこれまでなされてきている。一方で数学科の実践で曲を捉える研究は、音の周波数に注目した武久・黒田(2022)の研究ほか稀少である。加えて本研究のように、音源に含まれる要素(音程、音価、強弱など)のうちのいくつかを図形として捉えて、その図形を様々な態様で(反復)移動させることによって作曲する研究は、管見の限り本研究以外には皆無で、新奇な研究である。
2.研究の意義
図形を平行・回転・対称移動させる見方を働かせることは、数学科の醍醐味の一つである。天野(2021)は二等辺三角形を平行移動や回転移動、対称移動させて麻の葉模様を創る授業を紹介している。また、天野(2022)はもとの図形を繰り返し移動させた模様の作品を創る授業を展開している。

