昆虫飼料がもたらす淡水魚類の成長・生理・生態および腸内細菌叢への影響 | 下中記念財団

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広島県立西条農業高等学校 和泉 裕志

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昆虫飼料がもたらす淡水魚類の成長・生理・生態および腸内細菌叢への影響

Effects of Insect Feed on Growth and Gut Microbiota of Freshwater Fish

第63回下中科学研究助成金取得者研究発表より

<h1>昆虫飼料がもたらす淡水魚類の成長・生理・生態および腸内細菌叢への影響</h1>

魚類の成長・生理・生態と腸内細菌叢との関係を調べた例は限られており、特にメダカやヨシノボリなどの淡水魚類では、食性変化に伴う腸内細菌叢の変化が魚体に及ぼす影響は、まだまだ未知の部分が多いと考えられている。

1.研究背景と目的

現在、人や家畜などを中心に、食や健康と腸内細菌叢との関係を調べた研究が数多く行われている(福島(平川)2019;Taguchi Y et al.,2025)。その結果、腸内環境を整えて消化吸収能力を向上させたり、ある特定の病気に罹るリスクを軽減したりする細菌が、様々な動物の腸内に生息すると分かっている(加藤 2019;土田 2019;井上 2022)。魚類でも同様に、養殖魚を中心として、食や健康状態と腸内細菌叢との関連が調べられており、より生産性の高く、より効率的な養殖方法の確立に貢献している(吉水 2014)。

しかし一方で、魚類の成長・生理・生態と腸内細菌叢との関係を調べた例は限られており、特にメダカやヨシノボリなどの淡水魚類では、食性変化に伴う腸内細菌叢の変化が魚体に及ぼす影響は、まだまだ未知の部分が多いと考えられている。

淡水魚類には、メダカやヨシノボリなど主に昆虫を食べる魚類が多い。それら魚類を飼育する際には、魚粉などに様々な物質を混ぜて作製した人工飼料を与えることが多い。もちろんメダカやヨシノボリなどの観賞魚は、人工飼料でも飼育・繁殖させることが容易であるが、その実態は野生の個体とはかけ離れてしまっている。メダカの腸内細菌叢について調べた例でいえば、人工飼料によって飼育することでメダカの日和見感染症を引き起こす細菌類のAeromonas属が増加することが報告されている(Keisuke K et al.,2024)。しかし、淡水魚類の多くは、飼育が容易であるため、そもそも野生環境での食性(昆虫食)が成長・生理・生態にどのように影響しているのか調べた例はほとんどない。

現在、全国的に淡水魚類の種数や個体数は減少している。環境省レッドリスト 2020によると、評価対象種400種のうち、51%にあたる204種が絶滅危惧種または準絶滅危惧種に指定されており、メダカは絶滅危惧II類に指定されている(環境省 2020)。本研究により、野生個体と同様の食生活が淡水魚類に与える影響を明らかにすることができれば、淡水魚類の保全活動に役立つ知見も得られると考えられる。

淡水魚類の餌と腸内細菌叢との関係を明らかにするため、本研究ではまず飼育が容易で、入手しやすいメダカ(クロメダカ)を対象とした。また、昆虫飼料は、本校で飼育しているフタホシコオロギから作製したコオロギ粉末を飼料として使用することとした。

以上の背景から、コオロギ飼料がメダカの成長・生理・生態及び腸内細菌叢に与える影響を明らかにすることを本研究の目的とした。

※全文はこちらからPDFにて閲覧いただけます。

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