地域の自然や人と深く関わる体験的活動を通して育むふるさと原風景へのあこがれ | 下中記念財団

「平和」という木に 「教育」という水を

「平和」という木に 「教育」という水を

長野県飯田市立竜東中学校 田畑孝宏

長野県飯田市立竜東中学校 田畑孝宏

地域の自然や人と深く関わる体験的活動を通して育むふるさと原風景へのあこがれ

Participatory Practices in Environmental Education in Nagano

第55回下中科学研究助成金取得者研究発表より

<h1>地域の自然や人と深く関わる体験的活動を通して育むふるさと原風景へのあこがれ</h1>

山のなかでフクロウやオオタカを探したり、繁殖のためにやってきたブッポウソウのために巣箱をつくったり……。これは30年間にわたり長野県各地の小中学校で勤務してきた教師が、子どもたちとともに野鳥の保護や観察に取り組んだ記録です。住民や親たちを巻き込みながら行われる深い学びや体験が、地域の自然保護への高い関心にもつながっていきます。


――児童・生徒や保護者、地域住民らと協力してとりくんだ野鳥観察と絶滅危惧種・長野県の天然記念物ブッポウソウやフクロウの保護活動30年の総括

Ⅰ はじめに

平成13年8月、学習指導要領を受け、長野県では次のような学習指導改善の三つの柱を掲げ、教育課程改善の方向を示しました。

柱一 基礎基本の確実な定着を図り、伸びる力を一層伸ばす「分かる授業」
柱二 子どもの個性や地域の環境を生かす「特色ある教育課程」
柱三 共に生きる喜びや感動が生まれる「楽しい学校」

そして、この三つの柱を設定するに当たっての基本的な考えを次のように示しています。

「新しい柱には、保護者・地域住民が子どもと共に学んだり、必要に応じて教師と共に教えたりする『学習参加』による開かれた学校づくりを大事な理念にして、真に子どもを中心に据えた特色ある教育課程を編成し、学校・地域・家庭が一体となって子どもが行きたくなるような学校づくりを推進する考えを根底にしている」と。

また、各柱の具体には次のような項目も添えられています。

・地域の歴史・文化、人材、施設など地域力の積極的な活用
・やりがいや存在感を味わえる体験的・創造的な活動の充実  等々

さらに、「こうした柱に沿った教育活動が、全教育活動の中で営まれたとき、児童生徒に『豊かな人間性・自ら学び自ら考える力』などの『生きる力』が育っていくものと考える」と。(「教育課程改善の方針」長野県教育委員会)

こうした教育課程改善の方向を受けて行われてきた学校教育の現場から、次のような声も聞きました。

「ここ数年、学力低下の不安が声高に叫ばれ、基礎的な知識・技能の徹底に意識が向けられている感があるが、『豊かな心』『美しい情緒』の育成は、生きる力を構成する重要な要素であることにかわりはない。さらに私は、総合的な学習を充実させている学級では自然に基礎学力まで向上している例をいくつも見てきている。『豊かな心』『美しい情緒』の育成は、基礎学力にも確実に波及すると信じている」と。

地域の環境を生かし、保護者や地域の皆さんの理解と協力を得ながら、地域と共に子どもたちが育っていく、そうした体験的活動を子どもたちと創ってみたいと以前より考え、実践を積み重ねてきました。

平成16年4月1日、阿智村立阿智第二小学校赴任初日の校舎案内の折、次の言葉が私の目にとまりました。それは、体育館の壁面に掲げられた絵画「学校の見える風景(平沢多加子氏)」に寄せてありました。『この自然に恵まれた伍和を故郷として育つことに誇りを持ち、自分のためにも人のためにもしっかり働ける人間になりたい(伍和教育を語る会)』

私は、地域の皆さんの子どもたちに寄せる、この強い願いや思いを大切に受け止めたい。そのために、地域の自然の豊かさやすばらしさを子どもたちと実感していこう。そして、子どもたちを温かく見守り支えてくださる地域の方々の気持ちや願いにも触れ、地域や保護者の皆さんの理解と協力を得ながら、それらに応えられる活動を見いだしていこう。地域の自然と人とに深く関わる活動を通して感性を磨き、しっかり働ける子どもたちを育んでいこうという思いを、今まで以上に強くしました。さらに、そうした活動が、希少生物の保護にもつながればと考えました。


※全文はこちらからPDFにて閲覧いただけます。

2024年(令和6年度)「下中科学研究助成金」募集開始
パール下中記念館
ECアーカイブズ
百科事典情報基盤助成金
雅楽

下中科学研究助成金について

小学校・中学校・高等学校や教育センターなどの機関に属する教員や研究員が行っている「科学研究」を対象とした助成です。1963年の開始以来、すでに50年以上の実績があります。

最初に戻る
教育を高めておけばその国、その民族は亡びない

下中弥三郎のことば