沖縄県立コザ高等学校 永井秀行
高校地学における実験を取り入れたアクティブ・ラーニング授業の実践及び検証
GEOLOGY ACTIVE LEARNING
第56回下中科学研究助成金取得者研究発表より
2022年より、高校の学習指導要領が大きく変わります。その大きな柱の一つが、「アクティブ・ラーニング」=「主体的・対話的で深い学び」です。沖縄県立コザ高等学校の永井先生は、実験を取り入れたモデル授業を実際に行い、従来の講義型の授業よりも生徒たちの理解が深まることを実証しました。
1.研究の背景及び目的
文部科学省(2015)は、次期学習指導要領改訂において、アクティブ・ラーニング(以下AL)の視点からの授業改善について強く提言してきた。しかし、現在、研修等で実施されているALは、知識の定着を目的とした学び合い等の一般的なALが主流であり、知識の活用を目的とした高次のALはほとんど見られない。
地学(「地学基礎」を含む、以下同様)で扱う現象は、地震・火山・気象など日常の実生活との関わりが深い上、ニュース性が高く生徒の関心も強い。これらの特徴から、地学はALとの親和性が高い科目であると言える。
地学における知識の活用を目的とした高次のAL授業には、単元の1コマ内で生徒自身が既存の知識を用いてモデル実験をデザインしたり、モデル実験を通して現象の仕組みを発見したりするタイプ(「1コマ完結型AL」と呼ぶ)や、単元の集大成として知識を総動員した課題解決を行うタイプ(「集大成型AL」と呼ぶ)などが考えられる。
一方で、地学の履修率は、平成15年の推定値が5〜6%(2009 佐藤)と非常に低く、この頃は「地学は絶滅危惧種」と地学教員の中で話題となった(2009 鳥潟)。しかし、理科3領域必修となった現行学習指導要領下の平成27年の履修率は、27.7%(2015 文部科学省)と大幅に増加している。
ところが、地学の全国での新規教員採用数は、平成20年度数名、平成24年度10名程度(2012 中井)にとどまっている。
これらのことから、地学を専門とする教師数の不足は解消されておらず、多くの学校で、地学を専門としない教師が地学を教えている現状が推察できる。さらに、今後、地学を専門とする教師の大量退職が予想され、ノウハウの消失も懸念される。
地学で扱う現象は、時間・空間スケールが広大で、他科目の理科教師からは「地学は実験・実習に向かない科目」とも言われている。実験開発に関する研究の経験値が高い地学専門教師による、地学を専門としない教師への支援が急務であると言える。
そこで、本研究では、平成34年度に実施される高等学校の次期学習指導要領改訂を先取りして、より多くの学校への普及が期待できる、地学における実験を取り入れた高次の1コマ完結型ALのモデル授業(「AL実験」と呼ぶ)を開発・実践し、その効果を検証することを目的とする。
なお、2017年2月14日公示の次期学習指導要領改訂案から、「アクティブ・ラーニング」の用語が消え、「主体的・対話的で深い学び」という言葉に代わった。これは、「アクティブ・ラーニング」と銘打って、学び合いなどの「特定の学習や指導の方法の型」を追求する書籍や研修などが散見され、本来意図する「学習に対する姿勢や能力」からかけ離れていることが原因とも言われている。
本研究において目指すAL実験は、「主体的・対話的で深い学び」を育む授業に他ならない。従って、本稿においては、次期学習指導要領からは使用されない「アクティブ・ラーニング」という用語の使用を継続することにした。