兵庫県立洲本高等学校 谷川智康
ハイブリッドエンジンを用いたモデルロケットの実験
Hybrid rocket
第58回下中科学研究助成金取得者研究発表より
洲本高校科学技術部は現在、男子13名で活動を行なっている。2018年度よりロケットをテーマにした研究に取り組んできた。特に2018年度後半から2019年度前半にかけて、風洞実験装置を作成し、抗力係数が少ないロケットの機体開発に取り組んできた。
1.研究の背景と目的
1-1 洲本高校科学技術部
洲本高校は1897年(明治30年)に旧制洲本中学として設置され、創立123年目を迎える兵庫県下屈指の伝統校である。「至誠、勤勉、自治、親和」が校訓である。制服が自由化されていたり、校則を必要最小限のものにとどめ制定していたりと自由な校風と昭和28年センバツ高校野球で優勝した野球部を中心に部活動が大変盛んで文武両道が特徴である。進学においても毎年60 名前後の生徒が国公立大学に合格しており、卒業生の大多数が大学に進学する。
洲本高校科学技術部は現在、男子13名で活動を行なっている。2018年度よりロケットをテーマにした研究に取り組んできた。特に2018年度後半から2019年度前半にかけて、風洞実験装置を作成し、抗力係数が少ないロケットの機体開発に取り組んできた。ノーズコーン(機体先端部)や羽根の形状・枚数について100種類以上の組み合わせについて実験を繰り返し、抗力係数が低い機体開発に成功した。この研究成果を各種コンテストで発表し、第11回坊ちゃん科学賞科学論文コンテスト「入賞」、第68回日本学生科学賞兵庫県コンクール「神戸商工会議所会頭賞」および第43回兵庫県高等学校総合文化祭自然科学部門発表会「パネル発表優秀賞」を受賞するなど高い評価をいただいた。
ロケットに取り組んで以来、黒色火薬を用いた固体燃料ロケットで打ち上げてきた。これまでの風洞実験により開発した機体も黒色火薬を用い総推力160N・s であるG型エンジンを用いて打ち上げる予定であった。しかし、欧米でしか生産されていないG型エンジンの輸入環境が東京オリンピックを控えたテロ対策で厳しくなっていた上に新型コロナウイルス禍により輸入は不可能となったので、自分たちでエンジンを作成することを考えた。火薬を用いたエンジンを私たちが作成することは法令上できないので、大学のサークル等で研究されているハイブリッドエンジンロケットに目をつけた。市販のハイブリッドエンジンはプラスチック樹脂など高分子化合物が燃料に用いられるが、私たちは小説「ロケットボーイズ」に記載があるキャンディロケットに興味を持ち、砂糖をはじめとする身近な食品を燃料にすることを考えた。