神戸大学附属小学校 赤川 峰大
証明の萌芽としての小学校算数科における説明構成力の研究
Mathematical Proof
第59回下中科学研究助成金取得者研究発表より
小学校算数科における「説明」は、中学校数学科の「証明」とは異なりカリキュラム上の位置付けがないために、小学校現場での指導は各教師任せになっており、目的の曖昧な算数科の説明活動が散見される。
1.はじめに
1.1 社会的要請
学習指導要領(文科省,2017)では、論理的思考力・表現力が、汎用的な資質・能力としても重要視されているが、算数・数学教育においては、中学校の図形の証明問題の正答率が低いこと(平成29年度全国学力・学習状況調査中学校45.0%)が示すように、その育成の難しさが指摘されている。そのため近年では、小学校算数科における「説明」を「証明の萌芽」として捉えた系統的育成が急務とされている。しかし小学校算数科における「説明」は、中学校数学科の「証明」とは異なりカリキュラム上の位置付けがないために、小学校現場での指導は各教師任せになっており、目的の曖昧な算数科の説明活動が散見される。本研究では、その改善を目的として、「仮言的三段論法」と「普遍例化」に着目し、「説明」を論理的に構成することに関わる小学校段階の実態調査並びに授業開発を行なうこととした。
1.2 研究課題と研究方法
「証明」と小学校段階の「説明」の共通点として「仮言的三段論法」と「普遍例化」に着目することで、演繹的推論を用いて「説明」を構成することに関わる小学校段階の子どもの実態を明らかにするためにまず、仮言的三段論法と普遍例化が「証明」と小学校段階の「説明」の共通点として位置付けられることを明らかにする。具体的には演繹的推論を育成する手段としての「証明」の意義を明らかにした上で、「証明」を構成するための演繹的推論として仮言的三段論法と普遍例化が用いられていることを先行研究から明らかにする。次に仮言的三段論法と普遍例化によって構成される小学校算数科題材における「説明」を事例的に示すことで、小学校段階の「説明」と「証明」に、共通の手順があることを明らかにする。