「平和」という木に 「教育」という水を

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群馬県立富岡高等学校 茂木孝浩

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第3回「表彰事業」優秀賞『薄膜干渉分野におけるチタンの陽極酸化の教材化』

Anodized titanium

第3回「表彰事業」受賞者研究論文より

<h1>第3回「表彰事業」優秀賞『薄膜干渉分野におけるチタンの陽極酸化の教材化』</h1>

薄膜干渉の原理は多くの光学製品に応用されている。薄膜干渉の実験教材といえばしゃぼん玉が有名だが、今回は陽極酸化による「チタンの酸化膜」を実験教材に取り入れる方法を検討した。その結果、直流安定化電源を用いると比較的簡単に理論通りの発色を実現することができた。特に高電圧を用いたときには、干渉色の多彩な変化の様子や、単色光照射時の膜厚増加に伴う明暗変化の様子が観察された。得られた知見をもとに、簡単かつ安全な演示実験の方法を考案し、授業中に実践した。また、演示実験の動画を作成し、成果を各方面に報告した。


1.序論

理科の学習の基盤は観察・実験にあり、観察・実験を支える良い教材の開発は理科教育の発展と不可分の関係にある。今回は教材化を検討する分野に「薄膜による干渉(以下、薄膜干渉)」を選んだ。薄膜干渉は高校物理「光の回折と干渉」における代表的な事例の一つと言える。

薄膜干渉を学習するための実験教材と言うと、頻繁に取り上げられるのはやはりしゃぼん玉の観察だろう。しゃぼん玉の色付きが干渉による現象だと理解することは、観察の仕方を工夫すれば可能だと思われる。しかしながら、しゃぼんの膜厚dが不明な(測定困難かつ時間変化がある)ために、理論式 2ndcosr = mλ(位相反転の影響がない場合の明線条件)の定量的な検証実験は難しいと言わざるを得ない。

筆者は以前「干渉の条件式を満たす単層反射防止膜教材の開発」「光学薄膜教材の開発に関する研究」により反射防止膜を施した数種類の新規教材を開発し、各種研修会や研究大会などの折りに報告した。反射防止膜教材は膜厚が一定不変で、定量的な検証実験を行うことが可能な上、物理学の身近な応用事例であり日本の光学技術の高さを実感できる教材でもある。その反面、これらの教材は光学薄膜が事前に付加されているため、薄膜干渉の影響により反射光が少ないのか、もともと反射光が少ない特別な素材なのか、判別できないという課題もあった。

この問題の解決に向け、今回は「チタンの酸化膜」に注目した。純チタン表面の酸化膜は膜厚に応じた干渉色が現れやすく、加熱酸化(温度)や陽極酸化(水の電気分解)(電圧)により膜厚をコントロールすることができる。この酸化処理技術は主にチタンの耐食性を高めることを目的に、同時に近年は多彩な色変化に注目した建材や装飾への応用を目的に盛んに研究が行われ、工業的にはある程度一般化した技術と言える。一方、薄膜干渉の学習を目的とした研究は前例がなく、実験教材に取り上げられることはもとより学習時に紹介されることもほとんどない。この技術を教材化できれば、生徒は「薄膜なしの状態」から始め、膜厚が増加するごとに様々な干渉色を体験することができ、薄膜干渉を直感的に理解することが可能となる。

特に陽極酸化による方法は化学分野の基礎知識(水の電気分解など)も必要なことから、昨今特にクローズアップされてきた科目横断的な学力観の育成にも効果を発揮する教材となり得る。本研究により最適な実験条件が明らかになれば、物理と化学のクロスカリキュラム授業を実施し、学習効果を吟味したい。

※全文はこちらからPDFにて閲覧いただけます。

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